2009 年 10 月 のアーカイブ

こちら編集部〈4〉 松茸の香りと靴下の臭い

2009 年 10 月 5 日 月曜日
編集長: 「収穫の秋」「スポーツの秋」「行楽の秋」と、秋を形容する言葉は多いが、見習い君にとってはどんな秋や。
見習い: それはもう「食欲の秋」に決まってますよ。「実りの秋」よ、ごっつぁんですって感じですね。
編集長: そうか、やっぱり若いもんな。わしはなんちゅうても「芸術の秋」やな。
見習い: どうしたんですか、いきなりキョロキョロしだして。
編集長: いや、いつもやったらここで、「何を柄にもないことを」と女記者君が出てきて、「パッコーン」となるとこなんやが。
見習い: ああ、女記者さんなら、今日は取材に出てますよ。
編集長: そうか。それやったらちょうどええ。いてない時に言うとくけど、女記者君の前で「ブライダルの秋」とか口が裂けても…(パッコーン)あ痛たた。取材に行ってるんと違うんかいな。
女記者: 誰かさんと違って仕事が早いんです。それよりどういうことですか。私の前で「ブライダルの秋」とは口が裂けてもって。それってもう立派なセクハラですよ。
編集長: あ、いや、その、もし女記者君が寿退社なんてことになったら、我が社にとっては大きな痛手やということが言いたかっただけや。
女記者: ご心配なく。当分そんな予定はございませんから。
編集長: せやろな。そのきつい性格ではな。
女記者: 何かおっしゃいましたか。
見習い: そのきつい性格……ムグムグ。
編集長: いらんこと言わんでええ。それはそうと、秋の味覚と言えばやっぱりサンマやな。
女記者: ええっ? 断然、松茸でしょう。
編集長: あんな高いもん庶民の口に入らへんがな。それに「香り松茸、味しめじ」と言われるように、大して美味しいことあれへんし。
女記者: あの香りがいいんじゃないですか。シャキシャキとした歯応えもいいし。私は毎年最低でも1回は松茸ごはんと土瓶蒸しをいただきますね。
編集長: 香りと言うたらきれいけど、ぶっちゃけて言うたら体臭やろ。加齢臭と一緒……(グッキーン)か、角で叩くんはやめて。
女記者: ほんとにもう何でもかんでも、自分の低次元に引きずり込もうとするんだから。
編集長: そうは言うけど、欧米なんかでは松茸の香りは「洗濯してない靴下の臭い」とか言われてるらしいで。学名のトリコローマ・ナウセオスムはラテン語で「臭いキノコ」という意味やそうやし、香りというより体臭と感じてる人は案外多いんとちゃうかな。
見習い: どうして後ずさりしながら言うんですか。
女記者: 意味もなく叩きません! まあね、納豆にしろ、チーズにしろ、においは国によっても、人によっても好みやとらえ方は違いますからね。
見習い: でも、こんなに科学が発達しているのに、どうして松茸だけ人工栽培ができないんでしょうね。
女記者: そうよね。研究は進められているみたいだけど、まだ完全には成功していないようね。でも、人工栽培で年中食べられるようになったら逆に味気ないんじゃないかしら。秋の一時期しか食べられないから、外国産と言えどもありがたいわけでしょ。
見習い: 僕は永谷園の「松茸の味お吸い物」で十分です。あれ、中身は椎茸なのに松茸の香りがするんですよね。
編集長: 体臭…やない、香りの成分は桂皮酸メチルエステル、マツタケオールなどで、その人工合成に成功したのは1940年代らしい。
見習い: 60年以上も前じゃないですか。
編集長: それで「松茸の味お吸い物」が発売されたのは1964年の10月やそうや。新幹線の開通と東京オリンピックと同じ時やな。もう45年にもなるんや。
女記者: 編集長はその年に成人したんじゃ。
編集長: 何でやねん。まだ神童と言われてた頃や。ことわざ通り二十歳過ぎればタダの人になってしもたけどな。その点、女記者君は三十路を迎えても……(シューシャー)わ、何や、熱っ。
女記者: この夏、姪っ子とやった花火が残ってたの。今度失礼なことを言ったら打ち上げ花火をお見舞いしますからね。
編集長: おおコワ。張り扇の次は花火かいな。三十路を迎えても若々しいなと言おう……(ヒュルルル~)ヒ、ヒエーッ。