2010 年 5 月 のアーカイブ

こちら編集部〈11〉 右も左も怖いものだらけ

2010 年 5 月 23 日 日曜日
編集長: 今年のゴールデンウィークは記録的な好天続きやったな。見習い君なんか若いからいろんなところに遊びに行けて楽しかったやろ。
見習い: ええ、まあ。
編集長: 何や歯切れの悪い奴っちゃな。
見習い: それがですね、彼女と遊園地に行ったのはいいんですけど、彼女は観覧車とかジェットコースターとかばかりに乗りたがるんですよ。僕は高所恐怖症で狭いところも苦手なんです。だから楽しかったけど、いやな汗もいっぱいかきました。
女記者: 「一人で乗ってくれば」なんて言えないものね。
編集長: 情けない奴っちゃな。観覧車やジェットコースターなんか高いゆうても数十メートルやろ。わしなんかこの間、標高約1700メートルの大山中腹にある大山寺に行ってきたんやぞ。
見習い: 僕だって山なら何百メートルでも平気ですよ。地に足が付いてるんですから。そうじゃなくて観覧車のような高い建造物が苦手なんです。まして観覧車は畳半分もないような狭いスペースでしょ。それが空中を上がっていくんですから生きた心地がしませんでした。
編集長: そんなこと言うて、天辺でチュウしたんと違うんかいな(ガッシャーン)。あ、痛、たた。
女記者: 場所をわきまえなさい。第二といえど、編集室はそんな話題をふるところじゃありません。
見習い: 編集長たちは何かの恐怖症ってないんですか。
編集長: わしは女記者恐……(バッギャーン)クーッ、デコチンはやめて。
女記者: 自分の愚かさを棚に上げて、失礼なんだから。それはそうと、私が苦手なのはゴキブリやクモ、ヘビね。見ただけで膝の力が抜けそうになるわ。
編集長: 以前ちょっと恐怖症について調べたことがあるんやけど、英語圏には「フォビア(恐怖)リスト」というのがあって、それには500以上もの恐怖症があげられてるんや。
見習い: ええ、そんなにあるんですか。
編集長: 中には訳のわからんものもある。例えば「体の右側にあるものに対する恐怖症」。
見習い: 何なんですか、それは。具体的なものじゃなくて、右側にあるものが怖いんですか。例えば、リンゴでも左にあれば怖くないけど、右にあると急に怖くなるんですか。
編集長: さあ、ようわからんけどそういうことやろな。何しろ右側にあるものが怖いんやから。ムーディ勝山に頼んで、「右から来たものを左へ受け流すの歌」を歌うてもろたら治るんと……(バッキャーン)クーッ、右頬もやめて。
女記者: それで苦しんでる人がいるかも知れないのに失礼でしょ。でも、何が原因でそんなことになるんでしょうね。恐怖症というのは理屈じゃないから、原因なんてないのかも知れないけど。
編集長: せやけどこんなんになったら難儀やで。体育の授業で右向け右させられたら失神するんと違うか。そうかと思うと「左側にあるものに対する恐怖症」というのもある。
見習い: ハハハ。不謹慎ですけど笑うしかないですね。
編集長: 「見上げることへの恐怖症」というのは、見上げへんかったらええわけやから、右側や左側恐怖に比べたらましと言えばましやけど、うつむいてばっかりの人生もいややわな。
見習い: え、そうなんですか。「見上げることへの恐怖」だから、いっそ見上げてしまった方が楽になるんじゃないですか。どっちにしても、高所恐怖症なんて大したことないと思えてきました。
編集長: それはよかった。……あの、女記者君、ちょっとお願いやねんけど、そのペン立てのペンな、こっち向けんといてくれるか。
女記者: え、このペンがどうかしたんですか。
編集長: わ、わ、先っぽをこっちに向けるな。
女記者: これ普通のボールペンですけど。
編集長: 目の前に突き出さんといてくれ。わし、先端恐怖症やねん。ペンなんかの先っぽがこっちを向いてると、それが眉間に刺さるような気がしてくるんや。
見習い: じゃ、キリとか絶対駄目ですね。
編集長: いや、尖端恐怖症とはちょっと違うから、尖ったものでも横から見るぶんには何ともないんや。しかし、先がこっち向くとあかん。グラスに差したストローでもこっちを向いてると、眉間がジワッと熱持ったみたいになってくるんや。
女記者: フフフ。それはいいことをお聞きしたわ。これからは張り扇を振り回すまでもなさそうね。例えば、こんなふうに指をさされるのはどう?
編集長: やめてくれ! 爪伸ばした指で人をさすな。わしはどっちかと言うと、後ろ指さされる人間なんや。
女記者: ……(ほんとにアホ)。