2010 年 7 月 のアーカイブ

こちら編集部〈12〉 土用の丑の日にはやっぱりウナギ

2010 年 7 月 25 日 日曜日
編集長: はあ、夏が始まったとたん夏バテや。
女記者: 年は取りたくないものですね。
編集長: 違うわい。このところ公私ともにいろいろ忙しかったんや。ウナギでも食べてパワー付けないかんな。
見習い: ウナギと言えば土用の丑の日、今年は7月26日だそうです。聞くところによると、土用の丑の日にウナギを食べるように勧めたのは、エレキテルで有名な平賀源内だそうですね。
編集長: そうや。ある日、ウナギ屋の店主が源内先生の元を訪れ、「こう暑いと脂っこいウナギなんか誰も見向きもしません。なんぞええ知恵はないものでしょうか」と泣きついたんや。すると源内先生はしばらく考えて、「本日土用丑の日」と大書して店先に張り出すようアドバイスした。するとウナギを食べて精を付けようという人が押し寄せ、やがて土用の丑の日にはウナギを食べる習慣ができたというわけや。
見習い: でもどうして「本日土用丑の日」と書いただけで、我も我もとウナギを食べるようになったんですか。
編集長: それは当時、丑の日に「う」の付くものを食べたら体に良いという説があったらしいんや。それを源内先生は思い出させたというわけやな。せやから源内先生の元を訪れたのが、うどん屋やったら「うどん」に、ういろう屋やったら「ういろう」になってたかも知れん。
見習い: でも、うどんやういろうでは精が付くとは思えませんね。やっぱウナギでないと。
女記者: 何しろ『万葉集』にも夏バテにはウナギと詠まれているんですからね。ほら、ここに引用してあるでしょ。「石麻呂に 吾物申す 夏痩せに よしと云ふ物ぞ うなぎ取り召せ」(大伴家持)。
見習い: ほんとだ。しかし、こんなことを歌に詠みますか。故郷(くに)のお袋が「野菜を摂らにゃあいかんぞ」と言ってるのと同じじゃないですか。そんなのが『万葉集』に載るなんて。この「いえもち」さんて、名前の通り家持ちの権力者だったんですかね。
女記者: 「いえもち」じゃなくて「やかもち」。国語の教科書で習わなかった?
見習い: 『万葉集』は覚えてますげど「やかもち」は……。
編集長: やかもちぃわい……(ガッシャーン)、くぅ、今日は張り扇なしでいけると思たんやがな。おいしいネタがぶら下がってると、芸人の性で、つい……(ガッシャーン)、おう痛、連発かいな。
女記者: いつから芸人になったんですか。ほんとにお調子者なんだから。
見習い: でも、どうしてウナギ屋の主人は、平賀源内なんていう人に相談に行ったんですかね。
編集長: それは町内でも一目置かれていたんやろ。何しろ平賀源内という人はとんでもない才人、奇人やったらしい。エレキテルだけやなしに量程器(現在の万歩計)や、磁針器(方角を測る道具)とか平線儀(水平を出す道具)なんかも作ってる。それだけやなしに浄瑠璃を書いたり、薬学、博物学にも明るく、果ては鉱山事業にまで乗り出した。それに『里のをだ巻評』という本では、ウナギのことをいろいろ書いてるらしい。そんな人やから、何かええアドバイスをもらえると思ったんやろうな。もっとも土用の丑の日にウナギが人気になるのは、源内先生の死後30年ぐらい経った文化文政の時代らしいから、この話の信憑性はかなり低いけどな。
見習い: そんな話をしていたらウナギが食べたくなってきました。
女記者: 私は脂っこいのは避けたいので江戸前がいい。
見習い: 大阪のと何か違いがあるんですか。
女記者: 江戸前のウナギは、余分な脂分を抜くため、素焼きした後いったん蒸してからタレをつけて焼き上げるの。それに関西ではお腹の方から割くけど、武家社会だった江戸では、それは切腹を連想させるからと忌み嫌って、背の方から割くという違いもあるわね。
編集長: どっちから割いてもええけど、蒸したりしたらあかんで。脂ぎったところがウナギの持ち味なんやから。見習い君は若いねんから、脂でコテコテのウナギを丸ごと一匹食べて、その後、口直しに梅干しをどっさり食べ……(バキ、バッキャーン)、お、往復はやめてぇな。
女記者: 食い合わせを勧めてどうするんですか。
見習い: 何ですか、それ。
女記者: 食い合わせと言ってね、昔からウナギと梅干しは一緒に食べると中毒を起こすって言われてるの。
見習い: 編集長はそんなのを僕に勧めようとしてたんですか。
編集長: 迷信や迷信。
見習い: じゃ、編集長がチャレンジして下さい。
編集長: いやや。万が一ということがある。
女記者: ほんと身勝手なんだから。見習い君、こんなの放っておいて私たちだけで鰻重食べに行きましょ。
編集長: そんな冷たいこと言わんと。
女記者: 編集長はそこのウナギの寝床で長くなってればいいでしょ。
編集長: (ガッキーン)♪ウナギおいし、蒲焼き……(バタン)。