2010 年 9 月 のアーカイブ

こちら編集部〈13〉 祝日と幸せな男の日

2010 年 9 月 11 日 土曜日
見習い: ふう、外は9月だというのにギンギラギンですよ。
女記者: いつまで夏が続くのかしらね。何だか年々秋が短くなっていくみたい。
編集長: 確か今年の梅雨が明けてすぐの7月20日か21日のことやったと思うけど、テレビで女子アナウンサーが「この暑さはいつまで続くんでしょうか」と言うとった。難関を突破してアナウンサーになったんやから勉強はできるんやろうけど、言葉の使い方を知らんねんな。それは9月になってから使う言葉であって、7月で言うてどないするねん。7月、8月と暑さが続くのは分かり切ったことやないか。
女記者: はいはい、おじいさん。暑いんだからあまりカッカしないで。
編集長: 誰がおじいさんやねん。三十路の君に(ガッシャーン)、おお痛、年の話になると反応が早いな。それにいつもと違うて痛いだけやなしに熱いぞ。
女記者: さっきまで直射日光に当ててたの。ブリキ製の張り扇だからもう熱々よ。持つところは布が巻いてあるけど、それでも熱さを感じるんだから。
編集長: そしたらそんなもん振り回すな。ほんまわけの分からん奴っちゃで。それはそうと、わしはいまだに敬老の日が9月の第3月曜というのがしっくりこんのや。
女記者: あら、ご自分のことなのに。
編集長: ちゃうわい! わしはまだそんな年やない。今年の10月1日にある国税調査では、65歳以上を「老年人口」としとるんや。わしはまだ60歳にもなってない。
女記者: でも四捨五入すれば…。
編集長: 何で四捨五入せなならんねん。年齢の場合は一桁代は切り捨てや。
見習い: 僕らから見たら、50代も60代も一緒なんですけど。
編集長: 何ぃ、ほんだら君は、0歳児も10歳児も同じや言うんか。(ペタ)あ、熱い。熱した張り扇をオデコにひっつけるな。それやったら叩かれる方がましや。(ガッシャーン)せやからいうて叩くな。
女記者: ほんとに子供の言いがかりみたいなことを言うんだから。
見習い: (もう慣れたけど、二人ともよくやるな)
編集長: ほう、見習い君も1年たってようやく慣れたか。
見習い: ええっ? また人の心を読んだんですか(第1話参照)。
編集長: 呆れた顔にそう書いてあるんや。それはともかく、「敬老の日」というのは、昭和22年に当時の兵庫県・野間谷村(現・多可町八千代区)の村長と助役が、長い間社会に貢献してきたお年寄りに敬意を表すとともに、知識や人生経験を伝授してもらおうと、農閑期で気候もええ9月15日に敬老会を開いたのが始まりなんや。それが兵庫県全域、やがては全国に広がり、昭和41年に「敬老の日」として国民の祝日になったわけや。
見習い: へえ、何だか草の根運動的な祝日なんですね。
編集長: ええこと言うやないか。それで9月15日というのは、聖徳太子が病者や貧しい人たちを救うために建てた悲田院を開いた日であり、かつまた元正天皇が717年に年号を「養老」とし、高齢者に贈り物をした日とされてるんや。もっともこれは風説の域を出んけどな。
女記者: それでも9月15日から、何の意味もない9月の第3月曜に移すのはけしからんというわけですね。
編集長: 実際、高齢者団体から反発があったから、老人福祉法を改正して9月15日を「老人の日」、その日から1週間を「老人週間」とし、『ひろく国民が老人の福祉についての関心と理解を深め、かつ、老人が自らの生活の向上に努める意欲を高めるような行事が実施されるように努めなければならない』としたんや。
見習い: それで毎年、敬老の日にはお年寄り参加のイベントがあったり、幼稚園児が老人ホームを訪れたりするんですね。
編集長: ところがや、去年から持ち上がってる大型連休を秋にも作って、取得時期を分散化させるという法案が通ったら、敬老の日と体育の日、海の日は元の日にちに戻され、記念日やけども休日やなしに平日とされるらしい。5月の憲法記念日、みどりの日、こどもの日も同様や。休みでなくなったらみんな忘れ去られるで。
女記者: うーん、憲法記念日は、憲法改正を巡って集会が開かれたりして、マスコミでも話題になるでしょうけどね。ただ敬老の日や体育の日なんかは、何も行事が行われなかったら、確かに10年後には忘れ去られてるかも知れませんね。
見習い: 言っちゃ悪いけど、みどりの日や海の日は3年持たないじゃないですか。
編集長: 休みでないと関心を持たんというのも現金な話やけど、これまでの伝統が衰退していくことは間違いないやろな。その元凶となったのが、ただ3連休を作るために祝日を安易に動かした「ハッピーマンデー」制度やとわしは思てる。「幸せな男の日」だって? フ、冗談じゃねえ。どこか影のあるおいらにゃ無縁な日さ、フフフ。
見習い: 女記者さん、ガッシャーンてやって目を覚ましてやらなくていいんですか、編集長、ポケットに手を突っ込んで歩いて行きますよ。
女記者: どうせまた犬のしっぽを踏んで追いかけられるのがオチでしょ。放っておきましょ。