2016 年 4 月 のアーカイブ

こちら編集部〈25〉
十三参りで日々是好日

2016 年 4 月 5 日 火曜日
編集長: 早いもんで、もう4月や。4月はやっぱり胸躍るな。
見習い: うわ、編集長、まだいたんですか。
編集長: 君、それ前回も言えへんかったか。
見習い: 多分言いましたけど、素直な感想です。1年2カ月ぶりですけど、今回も定年になったんじゃないんですよね。また充電ですか。
編集長: いや、違うんや。こんなこと自分の口から言うと自慢してるみたいでいややねんけど、アメリカのマサチューセッツ工科大学で、1年間限定で教鞭を執ってたんや。25人の学生相手に量子力学を教えてた。さすがノーベル賞受賞者が80人を超えるという名門の私立大学や。みんな優秀やったわ。
見習い: ええ、本当ですか。工科大学と漁師の力関係にどんなつながりがあるんですか。
編集長: レベルの低いボケはやめとけ。魚獲る漁師やない。物理学の量子や。
見習い: そんなもの編集長に分かるわけないじゃないですか。嘘でしょ。
編集長: ああ、嘘や、エイプリル・フールや(ガッシャーン)。おお痛い。ブリキの張り扇、1年ぶりの衝撃って、手荒い歓迎やのう。
女記者: 4月1日はとっくに過ぎました。それに私は歓迎など一切してません。
編集長: 相変わらず手厳しいのう。それはそうと、最近はあんまりエイプリル・フールやいうて嘘ついたりせえへんな。わしらが子どもの頃は、「今年から野球はフォーアウトでチェンジになる」「亀屋が12時からポンセンただで配るらしい」とか言い合ったもんや。
女記者: (何と程度の低い)
見習い: ネットではいろんな嘘がアップされてるんですけどね。今年もエスプリラインの「世界初の動物語教材『スピードラーニング・ペット』や、コカ・コーラの『炭酸電池 新発売!』などがアップされてました。
編集長: ワンワンとかニャーニャーを聞き流すだけで、犬や猫と会話ができるようになるというわけか。面白いやないか。
見習い: 炭酸電池は、はじける炭酸で発電するそうですよ。編集長もこのぐらいのレベルの嘘を考えて下さいよ。
編集長: いや、わしは根っからの正直者やさかいなあ。
女記者: それこそ大嘘じゃありませんか。
編集長: 軽く落ちがついたところで本題に入ろか。胸躍る4月や。
見習い: そんなのが本題なんですか。4月だからって胸躍りますか。
編集長: 踊らんか。ポカポカと陽気はようなるし、わしとお釈迦さんと昭和天皇の誕生日があるし……(グワッシャーン)おお、復活早々の2連発って、痛いわい。わしは事実を言うただけやで。
女記者: 湧いてきたもんとお生まれになった方とを一緒にしたら罰が当たります。
編集長: わ、湧いてきた……失礼な。島根県の片田舎の貧しい農家の三代続く長男として、鉦や太鼓で祝福され……
見習い: ガッシャーンしないんですか。
女記者: 無視無視。こういう手合いは無視されるのが一番こたえるのよ。
見習い: さすが。女記者さんにかかると、編集長も形無しですね。でもまだやってますよ。
編集長: すくすく育って6つと3日、ピカピカのランドセル、背負って歩くは満開の桜並木、はらほろと散る花びらに頬を染め……
女記者: そろそろかもね。ええい、やめんかい!(グワッシャーン)
編集長: あ、痛たたた。掟破りの3連発。そや、桜並木で思い出したけど、花見なんか胸躍るものの最たるものやと思わんか。
見習い: ええ、それが3連発に対するリアクションなんですか。
編集長: 冬が終わって、誰もが心待ちにしてた春が来る。その象徴が桜なんや。全国各地でソメイヨシノの標本木を決めて、その木の花が5〜6輪開いたら開花宣言を出す。それで標本木のつぼみの80%以上が開いたら満開とする。そんなん決めてるの桜だけやで。それだけみんな桜が咲くのを待ち望んでるわけや。
見習い: 大阪の標本木はどこにあるんですか。造幣局ですか。
編集長: あそこの桜は遅咲きが多いから、標本木にしたら、開花宣言した時にはほかの桜は散ってたってことになる。大阪城の西の丸庭園にあるんや。ちなみに今年は3月23日に開花し、4月1日に満開になった。どや、花見しに行こか。
女記者: 前にもお断りしましたけど、私は「長屋の花見」に参加する気持ちはこれっぽちもございません。
編集長: そんな貧乏花見するかいな。お茶けやのうてちゃんとしたお酒やし、卵焼きはタクアンやのうて高級だし巻きや。ふんわりしてるから、なんぼ噛んだかて「ポリポリ」音なんかせえへんで。
女記者: そんなものにつられません。金輪際行きませんから。
編集長: 強情な奴っちゃな。しゃあない、見習い君、二人で花見しょ。ちゃんとお茶けとタクアンの卵焼き用意したるさかい。これがほんまの「ダイコン(醍醐)の花見」や。
見習い: 女記者さん、張り扇、ちょっといいですか。(バシャン)案外難しいんですね。
編集長: こら、見習いのくせに何をするんや。わしの頭はスイカやないぞ。
女記者: 智徳・福徳がないから、そうして若い人にもバカにされるのよ。どうせ子どもの頃こういうお参りをしなかったんでしょ。
編集長: おお、十三(じゅうそう)参りな。確かに子どもの頃はせなんだけど、今はしょっちゅうお参りというか、お馴染みというか……(グガッシャーン)うう、さすが手練れの一撃は頭の芯に響く。
女記者: ほんとにもう、アルコールで脳味噌が溶けてるんだから。これは十三(じゅうそう)じゃなくて「十三(じゅうさん)参り」。主に京都や大阪の伝統行事で、男女共、数えで13歳になったら、智徳・福徳を授かるために虚空蔵菩薩にお参りするんです。昔は旧暦の3月13日、今は4月13日を中心に、3月13日から5月13日までが一般的です。
編集長: わしは島根県生まれやから。
女記者: 13の時には、大阪は住吉の長屋にいたんでしょ。
編集長: 花見はしてないぞ。(ズン!)痛いわ、張り扇で突くな。
女記者: 女子はこの時に初めて大人と同じ本裁ちの着物を着て、着物の裄を肩のところに縫い上げる肩上げをしてお参りします。そして帰宅したら、肩上げの糸をほどきます。男子は昔の元服ですから、羽織袴が正式です。もちろん今は普通の服や学校の制服でお参りしてもなんら問題ありません。ただ、帰る時に後ろを振り返ると、授かった徳がなくなると言われていますので、前だけを見て帰りましょう。おそらく編集長は何度も後ろを振り返ったんでしょうね。
編集長: せやからお参りしてないって。
見習い: 数え13歳っていえば、小学生から中学生に上がる時ですよね。僕もお参りした記憶がないですね。
編集長: ははあ、何回も振り返ったな。
見習い: 一緒にしないで下さい。
編集長: なあ。見習い君。君もわしも13の時に徳をもらいそこねた人間や。今さらそれをどうこう言うてもしゃあない。せやからこれからはせいぜい十三(じゅうそう)参りしよ。
見習い: どういう理屈なんですか。
編集長: 絶品料理なんかはないけど、安うてええ店いっぱいあるで。わしが作った十三の歌も聴かしたる。
見習い: 聴きたくありません。
編集長: そんなこと言わんと。行こ。徳は授からんけど、十三だけにトミ(富)は得られるで。
見習い: ガッシャーンで締めくくらないんですか。
女記者: 無視無視。皆さんも無視ね。